2015/04/16

既に始まっている気候変動:深刻な水不足に米企業はどう対処しているのか

国土が大きいアメリカでは、干ばつ、洪水、竜巻、ハリケーン、山火事、猛暑、厳寒、大雪と、地域により多種多様の異常気象が発生しており、その規模と頻度は増すばかりです(一週間にどれだけの災害報道があるか、ヤフーコラムに記載しています)。

中でもとりわけ深刻なのが、カリフォルニア州の干ばつです。同州では過去4年間、深刻な水不足が続いており、昨年から市民と水関連の事業者に対し、洗車や植物の水遣り制限、水使用量の報告強化等の緊急規制が課されています。今年に入り、飲食・ホテル等の事業者にも規制が課されることになりましたが、顧客から要求があった場合のみ水を提供する、タオルやベッドリネンを毎日替えない選択肢があることを目立つように表示するといった軽度の規制のみであり、製造業等への規制はありませんでした。




これを受け、環境団体セリーズ主導の下、同州を拠点とするドリスコルズ(ベリー類ブランド)、KBホーム(住宅メーカー)、リーバイス、ギャップ、同州に工場のあるコカコーラ、ゼネラルミルズが、水利用の自主規制キャンペーン「コネクト・ザ・ドロップス」に署名。州の水保全計画を支える事業活動を行い、政策決定者・従業員・顧客・同業者と共に水管理と効率性向上に努めることを約束しました。

干ばつによる影響が最も大きいのは食品産業です。2014年の干ばつによる経済損失は22億ドルとされており、既に多くの農家が休・廃業しています。一方、地下深くまで井戸を掘り下げて地下水を汲み上げる農家も少なくなく、問題視されています。これに対処するため、ドリスコルズは自治体、地域の農家、学者、非営利団体と共にコンソーシアムを設立。水の保全は地域のためであることを自覚し、政府や人任せにせず、費用がかかっても自身のために率先して対策することを約束しました。これにより、雨水貯留用の人工池を共同で建設し、個々の農家は各々実現可能な方法で節水を行い、水使用量を報告するようになったそうです。

同州拠点のデニムブランド、リーバイスは、デニムの染色には大量の水を必要とすることから、2011年より生産工程で使用する水の再利用に取り組んでいます。水使用率を最大96%削減できる技術を開発し、これまでに10億ℓの水を削減。この技術を使用して生産されたジーンズを「ウォーターレス・ジーンズ」と名付け、ロゴ付きで販売しています。さらに、消費者にもジーンズの洗濯回数を減らすよう訴え、CEO自らが1年以上ジーンズを洗濯していないことを公言し共感を呼んでいます。

同じく同州拠点の住宅メーカー、KBホームは、生活廃水を庭の植物の水遣りに再利用できるシステムとソーラーパネルを完備した節水・省エネ型家屋を開発。「ダブル・ゼロハウス」と命名し、ブランド化して販売しています。

気候変動は将来起こり得ることではなく、既に起こっている事象です。特に水問題は、遥か遠い途上国の出来事ではなく、先進国でも様々な形で発生している深刻な問題です。世界を視野に大きな視点で環境問題を考えることも大切ですが、地域や自国で起こりつつある問題を改めて見直し、企業自らが解決策を提示し、社会に対して気づきを与えるため率先して発信していくことも必要でしょう。

(レスポンスアビリティ社メールマガジン「サステナブルCSRレター」No.222 (2015/04/02発行)既出)

*上記記事の発行当日、カリフォルニア州知事が州内の水使用量を25%削減(2013年比)する知事令を発動しました。今後9ヶ月で150万エーカー・フィート(18億5千万㎥)の節水が予定されていますが、企業に対してはゴルフ場・墓地・大学構内など大規模庭園のある場所のみ節水強化が指示されています。市や地域の水事業者に対しては各々10~35%の削減目標が定められており、200以上の自治体や団体から再検討を求めるパブリックコメントが寄せられています。同州の今後の動向については、コラムやブログ等に追って記載します。

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