2015/02/01

サプライチェーンの透明性

アメリカでは、CSR情報の開示に関する政府の規制が徐々に増えてきています。

そのひとつに、2012年に施行されたカリフォルニア州サプライチェーン透明法があります。

同法は、同州で事業を行う、世界売上1億ドル以上の小売・製造業者に対し、サプライチェーンにおける人身売買や奴隷労働を排除する取組みを開示するよう求める法律です。

あくまで、同州事業者のみを対象とする州法に過ぎませんが、大企業の多くが同州で事業を行っているため、現在、当該情報を開示している企業は400社ほどにも上ります。

また、同法は排除を強制するものではなく、情報開示の要請に留まりますが、対策していないことへの批判を恐れる企業に対して牽制の役割を果たすため、実質的には抑制効果があると考えられます。


人身売買や奴隷労働は、遠い国で起こっている他人事のように感じるかもしれませんが、途上国に生産拠点がある企業にとって、身近で重要な問題です。

グローバル化に伴い、生産拠点と消費拠点の距離が遠くなり、サプライチェーンが複雑になるにつれ、仕入・消費する側から生産拠点の状況が見えにくくなりました。
しかし、現在でも、先進国企業が発注している途上国の生産工場で、労働搾取や人権侵害は起こっています。

そして、そうした事実が明るみに出れば、非難されるのは、現地企業ではなく、生産を依頼した先進国の企業です。
アメリカの消費者は、途上国の労働問題は関与する先進国企業の責任と考えているため、問題が起こると米国内での不買運動に発展します。

自社のみならず、サプライチェーン全体の透明性を高め、海外サプライヤーの労働管理をすることは、グローバル企業の責任であり、リスクマネジメントなのです。

昨年、バングラデシュの縫製工場が倒壊し、1,000人以上の死者が出る大惨事が起こりましたが、この工場に生産を依頼していた欧米の大手小売・アパレル企業が、メディアやNPO、消費者から厳しく非難されました。
その後、先進国各国の小売・アパレル企業は、バングラデシュの縫製工場の安全確保を目的とする国際合意を設立し、監視を強化すると共に体制改善に対して資金援助を行っています (ヤフーコラムに詳細を記載しています)


日本では、こうしたことに関心のある消費者は未だ少なく、法規制もありませんが、グローバル企業の社会的責任として、生産拠点で何が起こっているかを知り、バングラデシュのような凄惨な事故が起こる前に、率先して対策を取ることが必要ではないでしょうか。

(レスポンスアビリティ社メールマガジン「サステナブルCSRレター」No.207 (2014/12/11発行)既出)

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